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生食に関するトップ10の神話(誤解)を検証する

ペットの食事に関する科学的な側面について、いくつかの誤解を解く時が来ました。長い間、誤った情報がインターネット上にあふれ、ペットオーナーは何を信じればよいのか分からなくなり、その結果、ペットに「最善の食事」を与えることさえ怖がるようになってしまいました。なんとおかしなことでしょうか。

本記事では、ペットの生食(ローフード)に関する代表的な10の誤解を取り上げ、それらの背後にある科学的な真実を解き明かします。ただし、ここで紹介する情報には、先入観にとらわれず、これまでの考えを見直すつもりで向き合っていただきたいと思います。知識は力です。正しい知識を身につけることで、私たちはより良い選択ができるようになるのです。

誤解その1.ニンニクは有毒である。

獣医師である私自身もかつてはこの考えを信じていましたが、これは現在でも獣医業界の中で広く見られる誤解の一つです。混乱の原因は、ニンニクがネギ属(アリウム属)、いわゆるタマネギ科に属していることにあります。そして確かに、タマネギは有毒です。実際、タマネギ科の植物の多くは有毒とされています。なぜなら、チオ硫酸塩(チオサルフェート)と呼ばれる有害な化合物を非常に高い濃度で含んでいることで知られているからです。

チオ硫酸塩は体内で赤血球を破壊し、非常に深刻な貧血を引き起こす可能性があります。2000年に行われた日本での研究では、体重20kgの犬に対して1日あたりニンニク20片相当を与えましたが、それでも貧血は発症しませんでした。

逆にニンニクを犬に与えることによって、ノミ予防から免疫機能のサポートまで、さまざまな利点が考えられます。一般的な目安としては、体重15kgあたり、生のニンニクをすり潰したものを1/2片〜1片、毎日与えるとされています。犬は少量であればニンニクを食べることができます。 過剰摂取をおすすめいたしませんが、有毒であるという頑な考えではなく適量与える事によるメリットもある事は言えると思います。

誤解その2:アボカドは有毒である

この誤解はいまだに、一部のウェブサイトでは「危険な食品トップ10」に挙げられていますね。しかし2012年、プロクター・アンド・ギャンブル社が資金提供した研究によって、アボカドの毒性に関する噂はついに否定されました。この研究では、果肉・皮・種の抽出物を高用量で与える試験が行われましたが、いずれも問題は認められませんでした。

アボカドに毒性があるとされてきた原因は「ペルシン」という殺菌作用を持つ毒素にあります。この成分は葉や樹皮に含まれ、皮にもごく微量に存在しますが、そもそも犬に与える部位ではありません。また、種については窒息や異物誤飲の危険があるため、与えることはおすすめしません。一方、アボカドの果肉は栄養価が高く、必須ビタミンやミネラル、健康的な脂肪を豊富に含む、とても優れた食材です。


誤解その3:マッシュルームは有毒である

マッシュルームは有毒であるという一般な認識とは裏腹にキノコ類は飼い主として私たちのコンパニオンアニマルに与えられる最高の食の一つと言えるでしょう。与えられるキノコ類は私たちが購入できる店舗で販売されている物や薬用キノコであり、有毒の物が多く存在する野生類の物ではありません。

キノコの健康効果を裏付ける証拠は圧倒的です。人間と同様に、キノコは脳機能や免疫システムに非常に有益ですが、ペットがその恩恵を得るには一つだけ必要なことがあります、それは調理することです。

誤解その4生食は加工食品よりも感染症リスクが高い

信頼できる生食ペットフードメーカーは、抗菌剤や保存料を配合せず、冷凍保存に頼っています。一般的に肉食動物である猫や犬は、肉に含まれる細菌に対して非常に耐性があります。サルモネラ菌や大腸菌は腸内では正常な細菌とみなされ、免疫力が低下している場合や特に毒性の強い病原性菌株でない限り、ほとんど病気を引き起こしません。

加工食品も例外ではありません。過去10年間で、サルモネラ汚染により数百万トンものドライフードが回収されています。これには「プレミアム」と称され信頼されていた獣医推奨ブランドも含まれます。2006年の研究では、市販のペットフード(生食・加工食問わず)からサルモネラ菌と大腸菌が頻繁に検出されることが判明しています。信頼できるメーカーは、病原性細菌のリスクを最小限に抑えるため、高品質な原材料の調達を徹底するとともに、細菌数のモニタリング体制を整えています。ペットの食事管理におけるリスクを理解することは飼い主にとって極めて重要であり、その多くはペットフードの適切な取り扱いにかかっています。生・加熱・加工食品(ついでに果物や野菜も!細菌は日常的に存在します)を扱った後は必ず手を洗い、子供の手の届く場所に食品を放置しないこと。排泄物は速やかに処理しましょう。細菌を恐れる必要はなく、「体質改善」を重視し、環境に対処できる健康な腸内環境と免疫システムを構築することが肝要です。

誤解その5鶏首の部位は麻痺を引き起こす。

生の鶏肉(特に首部分)をコンパニオンアニマルへ与えることによるカンピロバクターの汚染による麻痺(免疫系への攻撃を引き起こす)との関連性の研究を2018年にメルボルン大学で行われました。免疫介在性疾患の既往歴があるペットには注意が必要ではありますが、健康なコンパニオンアニマルが生の鶏肉を摂取することでリスクが高まることを示す証拠は不十分です。生鶏の首には麻痺のリスクがあることを知らない人が多く、皮肉なことに、鶏肉(特に首の部位は)ペットが最も頻繁に食べる骨の一つである可能性が高い。したがって、この件を検討する際には常識な判断が求められます。

誤解その4:生の骨を与えるのは危ない

生の骨をコンパニオンアニマルに与える問題は白黒つけられる事ではありません。生の骨の与え方を間違えると危険も存在する事は明らかではあります。しかしながら生の骨を与える事で私たちのコンパニオンアニマルにとっては自然な歯ブラシでもあります。歯を歯石から守る事だけではなく、生の骨にはビタミンやミネラルが豊富です。骨を噛ます事で幸せホルモンが分泌されるため、良好なメンタルヘルスもサポートができるのです。私は生の骨を与えることには賛成の獣医師ですが、常にガイドラインを伴います:

     1.1. 体重がかからない骨を選びましょう。体重がかかる骨は歯を折ったりするリスクがはるかに高いです。誰もそんなことは望みませんので避けてあげましょう  

     1.2. 骨を与えるのなら、毎週与えましょう。たまに与えてしまうとご褒美感覚になりすぎてしまい、逆に骨が過度に貴重な存在となり、つい飲み込んでしまう(窒息の危険性)ことがあります。

     1.3. 適切な食品取扱いを実践しましょう。(生の骨は“生”の食材を扱うように扱いましょう。私たち飼い主も触ったら手洗いなど骨を置いた場所も清潔に消毒などしいきましょう)。悪例:35度の日に骨を4時間も外に放置しておいて、なぜ犬が病気になるのかと不思議に思う事はやめましょう。

     1.4. 愛犬がどのような噛み方をするタイプかを理解し、適切な骨を選ぶようにしましょう。犬の中には、丸のみしがちなタイプがいたり、一方では慎重に噛む犬もいます。理想としては、まず頭よりも大きく、体重がかからない骨から始めると、丸のみを防ぐことができます(カンガルーの尻尾、鶏ガラ、七面鳥の首、ブリスケットなど)。よく観察しながら、状況に応じて調整してください。

           神話7:犬は雑食動物である

この問題が議論を呼ぶ理由は、犬が「スカベンジャー(腐肉食動物)」であり、文字通りほぼ何でも食べる事ができるからです。野生化した犬が食事の最大30%を糞便由来の物質で摂取していることも示されています。また、一方で、可能であれば肉98%も食べることがあり、人間が近くにいる場所に生存している場合はより多くの炭水化物を摂取することにもなります。

しかし、この「犬は雑食である」という考えを私の中で否定する決定的な理由が、主に2つあります。

1つ目は、顎の形です。肉食動物の顎は上下にしか動きません。人間(雑食動物)や草食動物のように左右に動かすことができません。そのため硬すぎる骨を食べると奥歯を折ってしまうことがあるのです。

2つ目の理由は、「犬は何を食べて最もよく健康に育つのか」という点です。選択肢が与えられるのなら、犬は9798%が肉で構成する食事を選びます。私にとって、これは非常に明確な事実です。ただし、総合的な分類としては、私は犬を「腐肉食性の肉食動物」と考えています。


神話8:犬は人間と共に進化し、炭水化物を食べるようになった

生き延びる(survive」と「健やかに生きる(thrive」の違いという観点から、もう一つの神話を打ち破りましょう。犬が人間によって最初に家畜化されたのは約3万年前。優れた狩猟のパートナーだったことは間違いありません。その長い年月の中で、犬の体にはいくつかの適応が生じてきました。

家庭犬の中には、唾液アミラーゼ(炭水化物の分解を始めるために必要な酵素)を持つ能力に個体差があります。とはいえ、炭水化物の代謝の大部分は、膵臓から分泌されるアミラーゼによって制御されています。しかし、「消化できる能力がある」ということは、「それを食べるべき物だ」という意味につながる事ではありません。人間でいえば、体内で処理できるとはいえ、アルコールや砂糖を毎日すべきでないことは周知の事実です。。

私たちのコンパニオンアニマルたちにも同じことが言えます。犬には炭水化物を消化する能力があります(猫は犬よりさらに低いですが)、だからといって、食事の大部分が炭水化物で構成されるべきではありません。犬には炭水化物の必須摂取量はなく、タンパク質と脂肪が豊富で、炭水化物が極めて少ない生食ダイエットによって最も良好な状態を保つのです。

神話9:ペットに完全でバランスの取れた食事を保証する唯一の方法は加工ドッグフードであり、生食はバランスが取れていない。

自宅でペットのために**完全かつバランスの取れた生食(ローフード)**を作ることは簡単ではありませんが、栄養学の知識とガイドラインを守れば可能です。とはいえ、あらかじめ栄養バランスが整えられた生食を購入する方が、はるかに簡単なのは確かです。

ペットフード会社は、加工食品であれ生食であれ、一定のガイドラインに従っています。それが、アメリカの基準である AAFCO と、ヨーロッパの基準である FEDIAF です。これらは、ペットが必要とする最低限の栄養素量を定めています。

しかし残念ながら、これらのガイドラインにはいくつかの問題があります。定められているのは最低値・最大値のみで、最適なレベルではないこと、そしてペットフード会社に対する規制がほとんどなく、栄養分析の実施も多くが任意であることです。

多くの点で、加工食品の方が栄養バランスを欠くリスクが高いとも言えます。特に高温処理などの加工工程は栄養素の量を大きく変えてしまいます。実際に行われた研究では、ドライフード(キブル)が最低限の栄養基準を満たしている割合は3060%にとどまり、缶詰フードに関する研究では90%以上が基準を満たしていないという結果さえ報告されています。
――
以上、決定的な事実です。

神話10:生肉食は犬を攻撃的または血に飢えた性格にする。

この神話は本当にあるのだろうか?肉を食べることと、攻撃的・血に飢えた性質になることとの間に、因果関係はまったくありません。
狩猟行動は、あくまで「行動」です。それは原始的で、本能的、そして遺伝的なものです。この傾向は犬よりも猫の方がより強く、そのため完全室内飼育の猫であっても、獲物を追う行動に関連したしぐさを示すことが研究で明らかになっています。

私たちが自信を持ってペットに本物の食事を与えられるようになること、そして「健康に生きるために100%加工された食事を必要とする唯一の生き物がペットである」などという考えが事実ではないことを、理解していただけたらと思います。

この神話を検証する記事の締めくくりとして、この記事の中でも特にお気に入りの一文をもう一度繰り返します。
私たちのペットは、タンパク質と脂肪が豊富で、炭水化物が非常に少ない新鮮な食事でこそ、真に健やかに成長(繁栄)します。
これは彼らにとって最も消化しやすい食事であり、体にとっての「楽さ」が失われたときに起こるのが――**不調(disease**なのです。

作者について - Dr. Nicole Rous

ニコール・ルース博士は2008年にシドニー大学を優等で卒業。当初は英国で勤務した後、オーストラリア・メルボルンに戻り小動物診療に従事しています。動物生殖学に強い関心を持ち、この専門分野においてオーストラリア・ニュージーランド獣医科学者協会(ANZCVS)の会員資格を取得しています。またマッサージなどの補完療法にも情熱を注ぎ、ペットの総合的な健康状態と生活の質を高める方法について話し合うことを楽しんでいます。

20218月、ニコール博士はモン・アルバート獣医外科のディレクターとしてチームに加わり、患者への卓越したケアを提供し続けています。知識と経験を活かし、ペットがより長く、より健康で、より幸せな生活を送れるよう支援することに尽力しています。

ペットへの自然でホリスティックな健康管理への情熱から、ニコール博士は「シャイ・タイガー」を設立。主にオーストラリアの農場や生産者から調達した高品質原料を使用した自然派ペット製品を提供しています。自然療法の専門知識と患者への献身的なケアは、メルボルンをはじめとするペットオーナーにとって信頼できるパートナーとなっています。

参考文献:

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炭水化物の家畜化ARTICLE
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イヌにおけるアミラーゼ活性はAMY2B遺伝子コピー数と関連する:イヌの家畜化、食餌、糖尿病への示唆 Anim Genet. 45(5):716-22.  

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英国における犬猫用完全栄養食のミネラル分析と欧州ガイドラインへの適合性 Sci Rep. 7. 17107

屋内専用 捕食本能ARTICLE
Pyari MS, Uccheddu S, Lenkei R and Pongracz P. 2021.
経験は浅いが興味は尽きない - 屋内飼育のみの猫は、屋外に出られる猫よりも捕食的な遊びを好む傾向がある。 App Anim Behav Sci. 105373.


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